2004年11月『エリザベート』

俳優として初めてトンハさんの存在を知ったのはごく最近、2004年11月の初めのころ、梅田コマ劇場(現在の梅田芸術劇場)で『エリザベート』に出演されていたときのことでした。
エリザベートは、宝塚公演を何度も観ており、特に花組公演ではマダムヴォルフ、皇太子ルドルフとトートのシーンに思い入れが強く、何度も通った作品でした。
が、あいにくと東宝版のエリザベートを観る機会はなく、井上芳雄さんが「ミュージカル界の王子様」などと大評判となってもどうも足を運ぶことができずにいたのです。

そこで、一度くらいは・・・と足を運んだ梅コマで初めて触れたのがルドルフをトンハさんが演じている回でした。

一言でいうならば、非常に新鮮でした。
これまで観てきた耽美系王子様ルドルフではなく、実際にそこに生きている皇太子でした。
短時間の中に皇太子の苦悩、混乱、悲劇的運命を欲張らずにきっちりと組み立ててある知的な印象を受けました。
また特に歌唱力において注目すべきところがあり、歌唱力の優れた共演者と歌うと迫力と表現が格段に増します。
小手先の歌やダンスでごまかす俳優やそれすらできないで芝居だけに偏る俳優たちがいる中、トンハさんはテクニックと表現力の要素を駆使して物語をつむぐことのできる俳優であったところが魅力的でした。