2006年5月『エリザベート』

2006年5月、東宝のミュージカル『エリザベート』で三度目のルドルフ。
この役は、出演が二幕の約20分に集中していますが、物語上重要な役割を果たし、華やかな見せ場があることなどから、ミュージカルファンの間では、有望若手発掘ポストとも言われています。
三度目のルドルフでトンハさんが演じて見せたのは、これまでのルドルフをさらに深め、皇太子としての責務から逃げずに時代に立ち向かい、その生を完全に燃やし尽くした勇気ある青年であり、同時に家族の絆を追い求める、悲しき魂としての青年でもありました。
これまでのトンハさんのルドルフは、力強さや情熱的な表現がクローズアップされがちでしたが、今回は、その上にさらに、人としての悲しさやはかなさ、家族との絆を強くにじませており、一見相反するものが一人の青年の中にリンクし、共存していました。
トンハさんのルドルフが、物語により一層の奥行きを与えました。

歌、演技、ダンス・・・すべての技術的なものを充分にクリアしながら、奇をてらわぬ解釈はまさしく王道。悠然とした皇太子としてのスタイルで、ミュージカル的な”見得”を自然に切っていらっしゃり、見せ方が非常に美しかったことも印象的でした。
三年間向かい合い、深めてこられたものの、素晴らしい結実を見ることができました。様々なプレッシャーや壁を乗り越えながら、回を重ねるごとに役を深め、完全に難役を自分のものとした、挑戦と勇気が、今後新たな実りを生むことを、心より願っています。