2005年9月『エリザベート』

2005年9月には、ミュージカル『エリザベート』の再演で、再びルドルフを演じました。
現在日本のミュージカル界においてプリンスとも言われている・元祖ルドルフの井上芳雄くん、その後を追う新進気鋭の美青年ミュージカルスター・浦井健治くんとの、話題性溢れるトリプルキャストとなりました。
三人の演じたルドルフについては多種多様なファンの意見がありますが、おおむね井上くん・浦井くんのルドルフが同系色、トンハさんの演じたルドルフはそれとは違う別のカラーのルドルフだと言われています。
パク・トンハの演じるバージョンを、多くの人は「大人の色のルドルフ」と表現します。
もっと言うならば「精神が"大人"と、"子供"の二つに引き裂かれ、それを周囲から理解されない孤独な皇太子・ルドルフ」だったのではないでしょうか。
国と時代を憂いるストレスとプレッシャー、皇太子という役割を果たそうとするがゆえに、その役割を自らに与える存在であるハプスブルグ・皇帝陛下との意見の相違に悩み抜かねばならない状況。
大人になったが故の苦悩が他のルドルフに比べて深い。
その苦しみも、愛されているという実感があれば耐えうるものかもしれないけれど、母たる皇后に愛されているという実感がないために人としてどこかアンバランス。
その狂気には鬼気迫るものがありました。
たった20分に贅沢すぎるくらい人生を凝縮して演じ込めたトンハさんのルドルフ。
歌唱力、ダンス、演技といったテクニックよりも、彼が解釈し、その色につむいだ物語こそ、注目すべき素晴らしい魅力であり、才能です。
トリプルキャストのプレッシャーをものともせず、2004年からぐっとバージョンアップしたということは否定できません。
一体この人はどれくらい引き出しを持っているのでしょうか。
舞台挨拶で素敵なご挨拶の作文を披露、ソレを見た人の間で密かに「お日様の匂いがする王子様」といわれているとかいないとか・・・。